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パート労働者の社会保険適用拡大:産業界の反対により対象は限定的

2012/03/15

パートなど、週あたり労働時間が30時間未満の非正規雇用労働者にも社会保険(厚生年金・健康保険)の適用を拡大する案を検討していた政府・民主党は、3月13日、当面の対象者を「従業員501人以上の企業に勤める年収94万円以上」とすることで決着しました。

新たに対象となるのは約45万人にとどまり、施行は2016年から。370万人の加入という目標を掲げてきた政府は、2019年までにさらに対象者を増やすとしていますが、女性が多数を占めるパート労働者を安く使い捨てにし続けようとする産業界の猛反対により、当初目標は大幅に切り下げられてしまいました。

現行制度では、週あたり労働時間が30時間未満の労働者は、雇用主が半額を負担する厚生年金や企業の健康保険に加入できません。これら非正規労働者は、自己負担で国民健康保険や国民年金に入っている人もいますが、収入が乏しいため、その負担分すら払えないひとも多く、高齢になればいっそう生活困窮におちいる可能性が高くなります。
現行制度では、年収130万円以下で配偶者に扶養されるひとは、保険料負担なしで加入できます。女性が短く安く働くことを世帯単位では「お得」に見せるような制度によって、企業が保険料負担を免れ、女性の労働力を安く使い捨てにしてきた結果、女性労働者の半数以上が非正規で、シングル女性の3割が貧困状態に陥っています。

民主党は、社会保険の加入要件を週30時間以上から週20時間以上に緩和し、あらたに370万人を対象とする方針を打ち出しています。その第1弾として、「従業員300人超・年収80万円以上」の約100万人を対象とする案が出されていましたが、特に女性パートに依存してきた流通や外食産業は、企業負担が増えるとして激しく反対していました。こうした企業の意向をうけた民主党経済産業部門会議の議員らが先送りを唱えるなどして抵抗した結果、当初案は、大幅に切り下げられてしまいました。

非正規女性労働者の均等待遇をもとめてきた「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」「均等待遇アクション21」は、3月7日に提出した法案提出を求める要望書で、「これまで国民年金・国民健康保険料を自分で払ってきたシングルマザーやシングル女性などのパート労働者にとって、社会保険適用拡大は負担も減り、老後も安定するため朗報。今まで被扶養の配偶者として保険料を負担してこなかった人にとっても、厚生年金の受取額は保険料負担よりも多く、最終的な収支はプラスとなります。離婚や配偶者のリストラ、DVなどのリスクを考えれば、自分の年金の2階建て部分があることは、その人自身の安心となります」と指摘しています。
また、企業の反対論に対しては、「人間を雇うということは、その人の暮らしを支える社会保険についての負担をする責任が生じるということ。短期的に保険料負担が増加しても、中長期的にはパートの働く意欲や定着率が高まり、企業の生産性に貢献することになります」と述べています。

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