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日本の人権状況に強い懸念:国連人権規約委員会による最終所見

2014/07/31

2014年7月15日~16日、国連の自由権規約委員会による日本政府報告書審査が行われ、7月24日に委員会による総括所見(最終見解・勧告)が出されました。これは前回(2008年)の審査時よりも強い勧告であり、締約国である日本政府は勧告に従って改善に向けた措置を採る義務があります。

今回の審査では、死刑制度や特定秘密保護法、ヘイト・スピーチ、「慰安婦」問題に対する政府の責任、ジェンダーに基づく暴力やDV、性的マイノリティに対する差別、外国人に対する人権問題、精神病院における非自発的入院の問題や、アイヌ・琉球など少数民族の問題についても大きく取り上げられました。また、1998年の第4回審査、2008年の第5回審査時の総括所見の多くが実施されていないことについても懸念が示され、条約の国内法的効力や、政府から独立した国内人権機関の設立が進展していないことなど、国際人権保障システムの整備が進んでいないことについても懸念が示され、条約締約国である日本国内で多くの人権問題が進展せず、政府が解決のための措置を採っていないことが浮き彫りになっています。特に「慰安婦」問題については、今回、これまでよりも大きく取り上げられました。

「慰安婦」問題について、委員会は、日本の直接的な法的責任を伴う人権侵害であるとし、公人による差別的発言や、政府の曖昧な態度により被害者が二次被害を受けていることや、裁判所に提起されたすべての損害賠償請求が棄却され、加害者への刑事捜査及び訴追を求めるすべての訴えが時効を理由に拒絶されたてきたことに懸念を示しました。委員会は、即時かつ効果的な立法的及び行政的な措置を採ることにより、①加害者の訴追・処罰、②被害者および家族の司法へのアクセスおよび完全な被害回復、③入手可能なすべての証拠の開示、④教科書への十分な記述を含む、この問題に関する学生と公衆の教育、⑤公式な謝罪を表明することおよび締約国の責任の公的認知、⑥被害者を侮辱あるいは事件を否定するすべての試みへの非難を確実に行うよう勧告しています。強制連行の事実を認めない日本政府の認識については「性奴隷である疑念があるなら、なぜ国際的な審査によって明確化しないのか」と、被害者の人権が損なわれ続けている状況が厳しく指摘されました。

ほかにも、女性にのみ定められている再婚禁止期間や、男性と女性とで異なる婚姻最低年齢を設けている民法についても差別的条項の修正を行わないことや、政治的分野への女性の参画の不足、意思決定の場へのマイノリティ女性の参画についての情報の不足、女性労働者の半数以上が非正規雇用であること、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠・出産による女性の解雇に対する罰則措置の欠如など、女性が政治の場や経済的な場面において不利益を被っている状況についても懸念が表明されました。委員会は、クォータ制など、暫定的措置を採ることを含め、公的分野での女性の参画を増加させるための迅速な措置を採るよう勧告しています。

死刑制度や特定秘密保護法、ヘイト・スピーチの問題のほか、女性の人権状況についても多くの懸念、勧告が示された今回の最終所見ですが、「女性の活用」を打ち出しつつ、労働力として女性を酷使しようとする安倍政権は、いかに勧告を重く受け止め、人権問題を解決していこうとするのでしょうか。日本政府は今回の勧告に従い、あらゆる人権問題の解決のために、法的・制度的整備を含めた措置を緊急に採る必要があります。

UN: Concluding observations on the sixth periodic report of Japan

【報道】
毎日(7/25) 国連人権委:元慰安婦への「完全な賠償」を日本に勧告
【参考】
WAM(7/25)自由権規約委員会の日本審査の最終所見の「慰安婦」問題関連部分の日本語訳です。海渡 雄一「国連自由権規約委員会は日本政府に何を求めたかアムネスティ・インターナショナル「【活動報告】ジュネーブ国連欧州本部で、自由権規約委員会の日本審査が行われました!」

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