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JAL客室乗務員 マタニティハラスメント裁判提訴へ

2015/06/17

2015年6月16日、日本航空株式会社(以下JAL)の客室乗務員として働く原告の神野知子さんは、妊娠を理由に休職命令を出されたことに対し、休職発令の無効確認と休職命令から出産までの期間の未払い賃金および慰謝料の請求を求めて同社を提訴した。

2014年夏に妊娠がわかった神野さんは、会社が定める産前地上勤務制度(妊娠がわかった女性は希望すれば身体の安全のために地上勤務が認められる)の利用を求めたが、「ポストがない」という理由で認められず休職を発令された。世帯主として母親を扶養していた神野さんは、休職中に無給になると生活に困るため、期間中にアルバイトをする許可を求めたが、それすら認められなかった。

提訴同日に行われた記者会見では、日本航空キャビンクルーユニオン委員長の古川麻子さんが「これまでJALで働いてきた客室乗務員の女性たちの努力で獲得した制度が産前地上勤務制度で、2008年までは希望者全員に利用が認められていた」と話した。2008年、会社が一方的にこの規定を「会社が認める場合」という但し書きをつけて改定したのだ。その後は制度の利用を求めても、神野さんのように「ポストがない」という理由で休職を発令されてしまう女性が続出。社内の女性たちの間では「利用できない制度」として有名だったという。

神野さんの弁護団は、この規定の但し書きは、妊娠・出産を理由に女性労働者の差別的取り扱いを禁止する男女雇用機会均等法第9条3項に違反するものであり無効であると主張している。また、JALは「子育てサポート企業」として厚労省に認定された企業が持つことができる「くるみんマーク」を取得しているほか、「女性活動推進」に優れた企業として経産省に認定される「なでしこ銘柄」に選定されているなど「女性が活躍できる企業」として社内外にアピールしていることに触れ、会社の目指したいイメージと逆行していると訴えた。

また、記者会会見では、生産性優先の会社姿勢が問題の一つであることも指摘された。この制度の改悪は、10%の生産性向上を課題とした「2007-2010年度JALグループ再生中期プラン」のなかで行われた。「妊娠しても働き続けることができる環境を整えることは生産性向上とは別問題として扱うべき課題であり、企業の姿勢が問われている問題だ」と古川さんは話す。また、客室乗務員の早期離職率の高さにも触れ、女性が働き続けられる労働環境改善の重要性を訴えた。

神野さんは、「JALの客室乗務員は女性が多く働く、日本を代表する企業であり、そのような企業で、妊娠による不利益、マタハラが横行しているということは、日本の社会ではまだまだ女性たちが安心して妊娠・出産をすることができないということ。多くの女性たちが妊娠による不利益や無給生活で不安な思いをすることがなくなるよう祈りを込めて今回の提訴に至った」と話した。

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