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パキスタンスタディツアーから帰ってきました

2007/02/18

パキスタン・スタディツアーから無事戻ってきましたので、簡単に報告します。詳しくは5月の機関誌に参加者のみなさんからの報告として掲載予定です。

今回のツアーは、いろいろな方からの多大なご協力とアドバイスによって無事終えることができました。本当にありがとうございました。

◆2月10日土曜日
-督永忠子さん(日パウェルフェア・アソシエーション)
1981年にパキスタンに移住して以来、旅行会社を経営するかたわら、アフガン難民支援やパキスタン最北部での女性の自立支援プログラムをされてきました。
パキスタン人の夫との離婚後、親権獲得のためにたたかってきた裁判の経験、25年にわたるパキスタンでの暮らしから、イスラム(法)がパキスタンの女性に及ぼす影響についてお伺いしました。
子どもを日本で育てるかパキスタンで育てるかという話から始まり、情報や選択肢はないかもしれないが守られたなかで決められた生き方をする方が幸せか、失敗したとしても自分で選択する自由があるほうが幸せか、で白熱した議論となりました。

◆2月11日日曜日
イスラマバードからラホールに移動して、この日からはパキスタンの女性団体の訪問です。

-シルカット・ガー
女性に差別的な法の改正を求めて政策提言を行ってきた団体です。
代表のファリダ・シャヒードさんにお話を伺いました。
イギリス植民地時代から始まったパキスタンの女性運動の歴史、婚外交渉が国家に対する犯罪とされ、また無罪であることを証明するために4人の男性による証言が必要であるためにレイプのサバイバーが犯罪者とされてしまうハドゥード法の問題点や法改正をめぐる動きについてお話を聞きました。

-The Pakistan-India Peoples Forum for Peace and Democracy
印パ間の平和を、市民同士の対話を積み重ねることで実現したいと考えた両国の市民が集まり1994年に設立されました。

-パキスタン・インド国境閉門式
パキスタン、インドの国境線で唯一陸路での通行が可能な国境の町ワガに行きました。ここでは毎夕、国境をはさんで国旗を降納するセレモニーが行われ、パキスタン側、インド側ともに大勢の観光客が訪れます。観客を煽る役割の男性のかけ声に合わせて両国の観客が自国を称える歓声を何度も何度もあげるなか、国境警備隊が威圧的な態度で競い合います。
The Pakistan-India Peoples Forumの方はこのような愛国心を煽るようなセレモニーは即刻やめるべきだとおっしゃっていました。このような意見は少数派だが、インドとパキスタンは分かれるべきではなかったともおっしゃっていました。
インド側の観客席は男女ともいっしょでしたが、パキスタン側は地元の男性、地元の女性、外国人男性、外国人女性と席がわかれていました。そして男性は基本的に立って見ているのですが、女性側は写真撮影のためにみんなが席を立つたびに警備兵に座るように言われました。

◆2月12日月曜日
-オーラット・ファウンデーション
情報提供、政策提言を行えるよう市民社会を強める、アファーマティブアクションが執行されるように政策提言を行うの3つを柱として活動しているパキスタンでもっとも大きな団体の1つです。
村レベルから国政レベルまで幅広く活動しているそうですが、特に村レベルでは女性に関する情報を農村地帯の女性に伝えるためにラジオ番組を活用したり、村に情報センターを設置したりしているそうです。また、地域レベルの議会の女性議員(全議席の33%が女性に割り当てられている)にトレーニングも提供しているそうです。

-ラホール女性学研究所
この日は偶然にも24年前にラホールの女性たちが軍事政権に反対をして行動を起こしたまさにその日で、それを祝うパーティの準備に忙しいなか時間をつくって会ってくださいました。
フェミニズム、世俗主義、反軍事主義、平和、マイノリティの5つを柱として活動するなか、現在はとくにマイノリティの権利、平和、女性の土地に対する権利、未婚女性に対する女性の家族からの暴力の4つのプログラムに力を入れているそうです。
草の根レベルで活動するフィールドコーディネーターがおり、出身の村で地元の人々と協力してプログラムを行っています。女性に関して何か問題が起こったときには、彼女たちが中心となって地元の政府当局やメディアに働きかけをするそうです。
カシミール問題にも取り組んでいて、紛争下で女性が受けた暴力の事実を明らかにするとともに、現地の女性のリーダーシップのもと住民同士の話し合いを通じて平和を実現するための活動も行っているそうです。

-AGHS
女性、子ども、債務労働者のみを対象に、パンジャブ地方で唯一無料で法律相談を提供している弁護士事務所。
暴力を受けた女性のシェルター運営も行っています。民間で運営されているシェルターとしては唯一のもので、政府のシェルターとのもっとも大きな違いは、女性たちが自由にシェルターの外に出られることです。政府のシェルターでは女性は保護されるものとされていて、自分の力で弁護士事務所に相談に行ったり仕事を探したりして人生を切り開く機会は与えられないのだそうです。
女性が親の意思に背いて自分で結婚相手を選んだり、夫以外の男性と親しくなったり、夫と離婚しようとした場合に、父親や兄弟や夫が「一族の名誉」を守るために女性を殺す「名誉殺人」についての事実を記録した本も出版しています。ちなみに、昨年の「名誉殺人」の件数は前年度の2倍なのだそうです。

◆2月13日火曜日
-シームルグ女性資料センター
宗教原理主義が台頭するパキスタンにおいて女性に関する問題に取り組むなか、運動のためには情報の共有が重要だとの認識から設立された団体。
すべての問題は互いに関連しているとの認識から女性に関する様々な分野に取り組んでいます。レイプのサバイバーに自らの経験を語ってもらう調査をパキスタンで初めて行ったり、パキスタン軍によるバングラデシュの女性に対する暴力の事実を明らかにしたり、またスタッフに教師が多いため子どもたちに基本的人権やジェンダーについて教える教材開発も行っているそうです。

-Cathe Foundation、エイズ予防協会、APACHAパキスタンなど
「セックスワーカー」が多く働くヒーラーマンディ地区において、HIVへの感染予防、感染者のケアのために働く団体のみなさんにお話を伺いました。
ヒーラーマンディ地区は、もともとはムガール王朝時代の楽士のコミュニティでしたが、今はラホール周辺の村やアフガン難民キャンプからも女性がやってくるそうです。
また、パキスタンで公式に登録されているHIVの感染者はそれ程多くはありませんが、実際のところは明らかではありませんし、増加傾向にもあります。そのためHIVに関する情報の提供、コンドームの配布、クリニックの運営などを行っているそうです。
参加者の何人かは「セックスワーカー」が働く現場も見せていただきました。

2月14日はラホールでムガール王朝時代の城を見学、15日はイスラマバード近郊のタキシラで紀元前の都市遺跡や紀元前後の仏教遺跡を見学し、歴史の長さを感じました。

今回のツアーでは、軍事政権下、宗教保守派が台頭するなか、女性に関するオルタナティブな情報を提供、共有しようと活動する団体を多く訪れました。彼女たちが発行する貴重な資料をたくさん持って帰ってきましたので、ぜひセンターまで読みにきてください(残念ながら日本語ではありませんが)。
また、お二人の参加者がビデオを撮影してくださいました。早いうちにツアー報告会を開ければと思っていますので、楽しみにお待ちください。

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