国連女性差別撤廃委員会への資金拠出停止に抗議し、撤回を求める声明
2025/02/05PDFはこちら▼
国連女性差別撤廃委員会への資金拠出停止に抗議し、撤回を求める声明
2025年1月29日の北村俊博外務報道官会見において、外務省は、国連女性差別撤廃員が対日審査最終見解において皇室典範改正を勧告したことに対する措置の一つとして、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に対する任意拠出金の使途から同委員会を除外することを通告したことを明らかにした。私たちはこの決定に対し、以下に述べる理由から強く抗議し、撤回を求める。
皇室に関わる事柄は普遍的人権基準の対象外でありCEDAWは触れるべきでないという政府の主張は、日本国内においてしか通用しえない論理である。この政府見解の妥当性を国際人権基準との関係において検討する機会は、日本の市民に保障されなければならない。
CEDAWを含む国連人権機関の加盟国審査は、専門家委員会と政府、そして市民社会との間の建設的対話を促すことが目的である。勧告に異論があれば、文書や対話の機会を通じて反論や説明を尽くすべきであろう。政府は文書でも説明してきたと主張するが、議論を尽くしたとは言い難いにも関わらず、拠出停止の通告という強硬手段に訴えることは、日本が有する経済力の濫用であり、CEDAWに対するあきらかな威圧・恫喝である。
日本政府は近年、ジェンダー平等・女性の権利のための外交を推進していると主張してきた。だが今回の、自国に対する勧告を理由にCEDAWに圧力をかけるようなやり方は、日本によるジェンダー・女性外交が実際には国際公益のためでなく、自国益追求の道具にすぎないことを露呈している。
今年2025年は北京行動綱領採択から30年、女性・平和・安全保障決議から25年など、女性の権利に関する重要な節目であるが、反動保守勢力の国際的な台頭により、これまでの進展が損なわれる危険が高まっている。国際的に法の支配や多国間枠組みの維持を訴えていくべき立場にある日本が、CEDAWの活動を尊重せず、むしろ脅かすような行為をとることは、外交政策における著しい一貫性の欠如を示しているだけでなく、国際的にも重大な否定的影響をおよぼしかねない。
CEDAWとの建設的対話は、日本政府だけのものでなく市民社会にも開かれたプロセスであることをあらためて強調したい。このたびの政府決定の不透明さは、市民社会に対する説明責任の観点からも容認しがたいものである。
わたしたちはCEDAW拠出金に関する日本政府の決定に強く抗議し、ただちに撤回を求めるとともに、どのようなプロセスで今回の決定がなされたのか明らかにするよう求める。
2025年2月5日
NPO法人アジア女性資料センター