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ロンドン爆破事件に対する「イスラム法下の女性たち」の声明

2005/08/11

7月7日にロンドンで起きた爆破事件に対する、「イスラム法下の女性たちネットワーク(WLUML)」ネットワークの声明の日本語訳です。さらにくわしい情報はwww.wluml.orgへ。

「イスラム法下の女性たちネットワーク(WLUML)」は、7月5日ロンドンにおける爆破事件の犠牲者とそのご家族に対し、心から哀悼の意を表する。また暴力と闘うイギリスのみなさん、とりわけ女性運動やその他の進歩的運動に携わる仲間たちに連帯の意を表したい。

WLUMLは、ここで2001年9月の事件に関する声明の言葉を繰り返したいと思う。
「WLUMLネットワークの多くの仲間たちが直接的に暴力と破壊を経験しているがゆえに、私たちの悲しみはとりわけ深い。国家および非国家主体による無差別的な暴力とテロリズムはグローバルな現象だが、これらは民間人の生命の尊重という原則に対する侵犯である」。

WLUMLは今もなお、テロリズムを終わらせるには、不平等を引き起こす根本的な問題、すなわち世界と各国内における貧困と欠乏、不正義と搾取、そして偽善的な国内・外交政策を変えるために取り組む必要があると信じている。

レイシズムと同質化

爆破事件が起きたロンドンは、ムスリム文化を持つ国からの移民を多く抱えており、その中には3世代目になる人々もいる。マスメディアや政府関係者は、攻撃を非難する「ムスリム社会の責任」を強調し、「宗教指導者たち」の言説に焦点をあてることによって、結果的に、この事件がなんらかのかたちで宗教と関係があると主張する極右の政治的宗教グループの見解を受け容れてしまっている。しかし、この事件は正当化されえない暴力的犯罪である。WLUMLは、あたかも「ムスリム」の代表のようにふるまいながら、実際にはテロリズムなどの手段で自分たちの政治的目的を追求しているような勢力が、私たちの多様で複数のアイデンティティをハイジャックするのを許すわけにはいかない。

またもや単純に、出身地や祖先や皮膚の色によって、人々に宗教的アイデンティティがおしつけられようとしている。このような宗教的アイデンティティの強調は、つねに世俗的な思考を犠牲にして行われるのだ。
実行犯がイギリス生まれであったことも「内なる敵」というイメージをふくらませており、レイシストの攻撃を増加させ、長期的により根深いレイシズムの種を育てることになるのではないかと懸念される。

また、イギリス政府が長い間、極右の政治宗教グループの活動を無関心に許してきたことの責任が問われなければならない。ロンドンは、ムスリム文化圏出身の世俗的な人々や進歩的なムスリムたちの生活の場でもあったが、同時に、政治的社会的支配のためにイスラムを利用しようとする多くの極右グループの活動を許してもきた。

たとえば、あるイギリスのムスリム慈善グループのウェブサイトは、宗教テキストを用いて、女性器割礼のような有害な慣習を擁護している。また、1995年のフランス爆破事件の資金調達のかどで訴追されているラシード・ラムダは、イギリスで拘留されたが、まだフランスに引き渡されていない。

人権活動への影響と世俗的なオルタナティブの抑圧

WLUMLはまた、イギリスのムスリム社会の中の極右グループが、実際にレイシズムを自分たちの目的に利用するのではないかと懸念している。ヨーロッパや北アメリカの政府および多国籍企業は、「穏健なムスリム」との対話をいっそう推進しようとしているが、いったい誰が、彼らに「ムスリム社会」を代表して話す権限を与えたというのだろうか。「穏健なムスリム」と呼ばれているグループが、実際には、女性の人権や、ゲイ、シーア派やアフマディー派などの周辺化されたグループの権利について、きわめて抑圧的な態度をとっていることは見落とされている。一方、グローバルな左派の一部には、「穏健派ムスリム」を資本主義とワシントンのグローバル支配に対する闘争の仲間だと誤って考えている者もある。

私たちは、ロンドン爆破事件後、特定の政治的宗教グループがこの「聖ならぬ同盟」によって、あらゆるムスリム文化(ヨーロッパや北アメリカも含む)における進歩的な信仰者と世俗者たちを見えなくしようとするのではないかと懸念している。

さらに、これらの極右グループが、レイシストのバックラッシュに対するリベラル派の罪悪感を利用して、イギリス政府がすでに検討している「宗教に基づく嫌悪」や「宗教的冒涜」を犯罪化する立法を強力に推進することが懸念される。WLUMLネットワークが確認してきたように、このような法は、むしろ進歩的なムスリムや世俗的な人々を黙らせて宗教的アイデンティティを強要し、単一的な宗教解釈を強化するために利用されることになるだろう。

女性に対する影響

女性たちはいろいろな形で事件の影響を受けることになりそうだ。あらゆる「ムスリム」が潜在的テロリストとみなされるような状況では、女性たちもまた過激派グループの一部とみなされる。同時に、女性たちはコミュニティのなかの原理主義グループのターゲットにもされている。
爆破事件の直後から、ムスリム社会、とりわけイギリスの移民社会における女性の権利への影響は明らかになった。イギリスムスリム協会 Muslim Association of Britain の代表は「スカーフをかぶった女性はとくに注意深くして、不必要な旅行は避けるように」とさっそく警告した。このように、レイシストの攻撃は、すでに女性の移動を制限し、性別分離をいっそう強化するために利用されているのだ。

包囲されているという感覚がつくりだされ、オルタナティブな声が黙らされることで、ムスリム社会の女性たちが家父長的反動的な慣習に反対することは、いっそう難しくなってしまう。実際、このような変化は、他の場面でも、ムスリム社会の女性たちに対する暴力的な反動となって現れる。たとえば「脅かされているムスリムの価値」を守るためとして、差別的な方針が正当化されるだろう。女性にとって非常に差別的な、宗教に基づく家族法の要求も、こうした中で高まるかもしれない。私たちの経験は、ある文脈において政治的宗教運動が正統化されると、他の文脈においても人権のための闘いに直接的な影響が及び、地理的な境界と宗教的な境界の両方ともが閉ざされてしまうことを教えている。

最後に、この事件によって、イギリスにおける市民的自由はいっそう制限されるだろう。そして、「対テロ戦争」に機会主義的に参加して進歩的な政治運動をつぶそうとしてきたムスリム文化の国々の政府の権力を、いっそう強めることになりそうである。

私たちがもっとも恐れるのは、7月7日の爆破事件に対する反応が、進歩的な反対運動を抑圧し、オルタナティブな声を黙らせ、ヨーロッパその他におけるムスリム社会の同質化を強めることによって、結果的に、極右の政治的宗教グループの目標を助けることになるのではないかということである。それは、このような事件をいっそう起きやすくさせることになるだろう。

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