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拷問禁止委員会の勧告

2013/06/02

国連拷問禁止委員会は5月31日、日本における拷問禁止条約の実施状況に関する第2回審査の最終所見を発表しました。以下、女性に対する暴力を中心に要約しました。(正確な翻訳ではありません)

日本軍「慰安婦」問題について(パラ19)

橋下発言など、公人による暴言が続いていることを受けて、以下の懸念を表明。
・被害者に対し適切な救済および被害回復措置を提供していない。公的資金ではなく民間の募金による補償(国民基金)は不適切かつ不十分であった。
・加害者の訴追がなされていない。被害者に対する拷問の影響は継続的であり、時効は適用されるべきでない。
・「慰安婦」制度に関する事実および資料が隠蔽され、あるいは公開されていない。
・公人による事実の否定や被害者をさらに苦しめるふるまいが続いている。
・歴史教科書で「慰安婦」問題に関する記述が減少するなど、効果的な教育が行われていない。
・UPRや自由権規約委員会、女性差別撤廃委員会、社会権規約委員会、国連特別報告者等によるいくつもの勧告を日本が拒否している。

上記懸念事項を受け、日本政府に対しては下記の通り勧告を行いました。
・日本軍「慰安婦」問題について被害者を中心に据えた解決を行うため、効果的な立法および行政上の措置を即座にとること、特に
・性奴隷制という犯罪に対する法的責任を公に認め、加害者の訴追、適切な処罰を行うこと
・事実を否定して被害者をふたたび苦しめるような公人のふるまいに対して反駁すること
・資料を公開し事実を調査すること
・救済を受ける被害者の権利を認め、完全かつ効果的な救済と賠償を行うこと。
・日本軍「慰安婦」問題について人々を教育し、条約違反行為をさらに重ねないよう、あらゆる歴史教科書に記載すること。

女性に対する暴力・ジェンダーにもとづく暴力について(パラ20)

DV、近親間性暴力、婚姻内レイプを含むレイプなどジェンダーにもとづく暴力が続いていること、告訴、捜査、起訴、処罰が十分に行われていないこと、被害者に対する法的保護が不十分であること、性暴力が親告罪とされていることについて懸念を表明し、以下を勧告しました。

・法律、教育、財政、社会の分野にまたがる一貫性のある包括的な女性に対する暴力廃絶戦略を策定し実施すること。
・ジェンダーにもとづく暴力の被害者に、被害申し立てメカニズムへのアクセスを保障し、身体的精神的被害回復を支援すること。これは外国軍も含め軍人による暴力被害者にも保障されるべきである。
・(多くの被害が立件・訴追されていない状況を鑑み)すべての女性に対する暴力事件について、即座に効果的かつ厳正な捜査を行い、加害者を処罰すること。被害者の親告がなくとも性暴力を捜査することができるよう法律を見直すことを勧告する。
・あらゆる形態の女性に対する暴力およびジェンダーにもとづく暴力について、意識啓発キャンペーンを強化すること。

人身売買について(パラ21)

2009年の人身取引対策行動計画実施のための資源に関する情報の欠如、人身取引に関して逮捕された人数と起訴・処罰された人数の間の乖離、調整・監視メカニズムと、特に児童の人身取引対策の効果に関する情報の欠如について懸念を表明して以下を勧告しました。

2009年のエゼイロ国連人身取引特別報告者による勧告を完全に実施すること、特に
・被害者の身体的精神的回復のため適切な支援を提供すること
・人身取引の被害者が不法移民として救済を受けることなく強制退去させられないよう明確な被害者確認手続をとること
・加害者を訴追し適切に処罰すること
・関連職務に携わる公務員に専門的トレーニングを行うこと
・パレルモ議定書の批准を検討すること

総合的な所見として、委員会は、日本政府が条約で定義されている「拷問」について適切に対応するよう国内法体系を整備していないことを指摘。死刑、代用監獄、刑事事件の取り調べ方法などについても問題を指摘しています。最終所見の原文はこちらから。 先日の社会権規約委員会の勧告とともに、日本政府は委員会の指摘を謙虚にうけとめ、条約批准国として遵守義務を誠実に果たすよう努力することが求められています。

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