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国連社会権規約委員会日本審査の最終所見

2013/05/31

国連社会権規約委員会は、4月30日に行われた日本審査の最終所見を5月17日に発表しました。
 社会権規約は、基本的人権のうち社会的経済的文化的権利について規定したもので、日本政府は条約の批准国として、国内における条約の実施状況を定期的に委員会に報告する責務があります。(参考:外務省HP)
 総合的な所見として、委員会は、日本政府が社会権規約の規定を国内法体系において実施しておらず、条約上の義務を即座に実施すべきものとも考えていないことを批判し、国内法体系の整備や、法曹のトレーニング等により、条約上の義務を完全に遵守する措置を即座にとるよう求めました。日本政府はどの国連人権委員会でも同じような指摘を受けており、条約を批准した以上、遵守する義務があることを認識し周知すべきです。

ジェンダーに関連する勧告(注意:正確な訳ではありません)

・女性、婚外子、同性カップルに対する差別的法規がいまだに存在する。直接的間接的に権利享受が妨げられないよう法改正をすること。(パラ10)
・ジェンダー・ステレオタイプを是正するために意識啓発キャンペーンを行うこと。男女の職業選択の幅を広げるような教育を行うこと。(パラ13)
・第三次男女共同参画基本計画の目標は控えめすぎる。教育・雇用・意思決定においてクォータ制を導入するなど、もっと大胆な目標を設定すべき。(パラ13)
・コース別管理雇用や妊娠を理由とした解雇などの女性差別的慣行を廃止すること
・待機児解消のためいっそう努力し、手ごろな費用で保育が利用できるようにすること。(パラ13)
・次回以降の報告では、性別・収入・教育レベルが権利の享受にあたえる影響について統計データを提出すること。またそのようなデータが国の男女共同参画政策にどう生かされたかを報告すること。(パラ13)
・同一価値労働を行う男女労働者に同一賃金を支払わないのは違法であることを周知徹底し、賃金差別に対しては効果的な救済措置を講ずること。労働基準監督官に、同一価値労働同一賃金の原則について研修をうけさせるなど、法律の遵守のための効果的な措置を講じること。(パラ19)
・セクシュアルハラスメントの深刻さに応じた処罰を導入すること(パラ20)
・DVや夫婦間レイプを明確に犯罪として規定すること。(パラ23)
・日本軍「慰安婦」被害者が受けた長期にわたる搾取の影響を緩和し、彼女たちの経済的社会的文化的権利のためにとりうるあらゆる方策を講じること。被害者に対するヘイトスピーチ等を防止するため教育をおこなうこと。(パラ26)

生活保護に関連する勧告
・社会保障費の大幅な削減によって、社会的に不利な立場の人々が深刻な影響を受けている。給付削減が受給者の権利におよぼす影響を監視すること。(パラ9)
・生活保護に対するスティグマを解消し、敬意をもって扱うこと。申請手続きを簡素化すること。(パラ22)

これらの勧告が出されたのは、政府が改悪を閣議決定したのと同じ日でした。政府は明らかに条約義務違反である制度改悪を、国連の勧告も無視して進めようとしています。

そのほか、以下のような勧告も出されています。

・有期雇用契約の濫用、長時間労働を是正すること。(パラ16、17)
・最低賃金が生活保護基準や最低限の生活コストを下回っている。労働者が人間らしい暮らしができるよう、最低賃金決定のあり方を見直すこと(パラ18)
・高齢者の貧困、特に年金受給資格のない高齢女性や、無年金者の状況を懸念。最低年金保障制度の導入を勧告。次回以降、高齢者の状況についてジェンダー・収入源・収入額に関する統計データを報告すること(パラ22)
・東日本大震災への対応において高齢者、女性、障害者など弱い立場にある人の特別なニーズが十分に考慮されていない。人権に基づくアプローチをとり、差別なき災害対策をとること。(パラ24)
・朝鮮学校の高校無償化排除は差別であり、適用を行うこと。(パラ27)
・障害者、移住者、外国人、アイヌ民族に対する差別の是正

●勧告の本文(英語)はこちら ●アジア女性資料センターも参加するジェンダーレポートプロジェクトのNGOレポート(英文)
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