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【書籍紹介】「生殖技術 不妊治療と再生医療は社会に何をもたらすか」

2013/01/30
生殖技術――不妊治療と再生医療は社会に何をもたらすか 生殖技術――不妊治療と再生医療は社会に何をもたらすか
(2012/09/11)
柘植 あづみ

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 柘植は「生殖技術」を批判的に捉えるだけでなく、それを成立させている社会・文化的側面に着目している。その柱に、制度とも文化とも捉えられる「医療/技術」を据え、その影響性、志向性に注意深く目配りをしながら論考を重ねている。本書はそれらを凝縮した一冊と言える。「生殖技術」に関してフェミニストを中心に数多くの疑問が投げかけられ続けている。その一方で一貫して「科学」と「技術」の最前線・最先端で有り続けている。他方で、技術を受ける/受けたい人々は、どちらにも踏み込めない状況に置かれている。
本書は「生殖技術」について、立場を同じくする人々の中でも、微妙なグラデーションがある事を指摘しながら、置かれている環境・社会構造・気持ちの構造を巧みに描き出している。その結果「いったん可能になった技術は、多くの場合に、文化・社会との摩擦や衝突も時間とともに薄れ、人はその新しい技術に慣れ、それを受け入れてきた」ことを指摘している。そして「この社会は、治療が難しい病気や障碍をもつ人が人間らしく生きるという希望を、治す希望へとすり替え」ていることに触れ、医療や技術に絶対的な「信頼」と依存とも言える状態についての再考を投げかけている。(永山聡子)
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