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【COVID-19とジェンダー】開発および人道的状況下におけるCOVID-19アウトブレイクのジェンダーの意味

2020/04/11

COVID-19とジェンダー 翻訳記事

 

以下は国際人道団体 CARE Internationalが2020年3月16日に出した報告書「Gendered Implications of COVID-19 Outbreaks in Development and Humanitarian Setting」の要約版の翻訳です。原文およびレポート完全版はこちらのサイトから。

(抄訳)

中国湖北省で2019年12月下旬に最初に発見された新型コロナウイルス(COVID-19)は、141の国と地域に広がり、3月14日現在、156,000件以上の症例が医療関係者により確認された[1]。感染数は今後、数日、数週間、数か月のうちに増加し続けると予想される。初期の調査によると、COVID-19による深刻な合併症に罹患する可能性は高齢者が最も高く、女性よりも男性の死亡率の方が高いとされていたが、COVID-19に関するデータがさらに入手可能になるにつれ、この分析が変わる可能性もある[2]。いずれにせよ、すべての脆弱な集団は、COVID-19アウトブレイクの影響を受けることになる。

最近まで、開発途上国または人道的危機下におけるCOVID-19の感染は限られていたが[3]、現在は感染が発生している。感染症の予防とコントロールは、開発および人道的状況下において特定の課題がある[4]。最良の状況でも、アクセスの制約と貧弱なヘルス・衛生インフラは病気の予防と治療にとって障害となるが、これがジェンダーの不平等や治安の悪化を伴った場合、公衆衛生の対応はさらに難しいものとなる。

CAREは75年にわたって、苦悩の根本原因に取り組み、困難にある人々に対して、命を救う人道的支援を提供してきた。ジェンダー不平等に対処することが、危機やその根本的な要因への対処において効果的であると証明されているため、女性とジェンダー平等の取り組みにフォーカスをあて、100カ国以上で事業を展開している。これらの理由により、CAREはCOVID-19の感染拡大が、途上国や人道的危機下にいる女性や女子に与える影響について深く懸念している。過去の公衆衛生上の緊急事態からの学びをもとにCAREが分析したところ、COVID-19の感染拡大は、途上国や人道的危機のコンテクストにおいて女性と女子に甚大な影響を与える可能性がある。これらには、彼女らの教育、食糧安全、栄養、ヘルス、生計、保護への影響が含まれる。この先、アウトブレイクが抑えられたとしても、女性と女子は今後、数年間にわたり悪影響に苦しみ続ける可能性がある。

 

ジェンダーに基づく潜在的な影響

  • 公衆衛生上の緊急事態において、ニーズが増えているのにも関わらず、女性と女子をサポートする開発と人道的プログラムがしばしば中断される。これは短期的、そして長期的に女性と女子に重大な影響を与える。
  • 女性と女子に多大な介護負担をかける社会規範は、彼女らの健康、メンタルヘルスを脅かし、また彼女らの教育、生計やその他の重要なサポートへのアクセスを妨げる。
  • サービスへのアクセシビリティが減るため、ジェンダーに基づく暴力(GBV)や、親密な関係での暴力(IPV)の防止や減軽を含む、保護サービスに対する女性と女子のニーズは高まる。
  • 子どもたちは、ケア提供者から離されるなど、特定の保護リスクに直面する。
  • 公衆衛生上の緊急事態は生活に重大かつ持続的な影響を与える可能性がある。これは特に、インフォーマルや低賃金の仕事あるいは季節労働に従事する女性に当てはまる。
  • 介護負担の増加あるいは経済的圧迫により、女子が学校を中退させられる可能性があるが、これは彼女らの教育、経済そして健康上の影響を与える。
  • 公衆衛生危機の間、水、公衆衛生、衛生サービスから資金が転用される可能性があるが、これは女性と女子にとって衛生およびサニタリー用品へのアクセシビリティが減ることを意味する。
  • 女性が世帯主である場合は、男性が世帯主である世帯に比べ、避難所が不十分である可能性が高く、病気の高いリスクにさらされる。
  • 公衆衛生上の緊急事態の際、食糧が減る可能性があり、食べ物の量を減らすといったネガティブな対処法に頼らざるを得なくなる。女性が最後に最も少ない量を食べる家庭では、COVID-19への感染を含む、さらなる健康被害を導く可能性がある。
  • COVID-19のアウトブレイクの危険は、すでに人道的支援や保護を必要としている1億6800万人近くまで及ぶ。紛争や、避難施設の悪い状況やリソースの少なさは追加の支援や資金調達の必要性を高める可能性がある。

 

推奨事項

全てのアクターに以下を推奨する。

  • 積極的かつ早期の情報共有と調整に取り組み、民族、ジェンダー、国籍や性的志向に関係なくすべての個人のニーズを汲んだ複合的な分析を用いてグローバルな対応をすること。これらの取り組みは、特に女性と女子など、リスクのある人々の全面的な参加によって行われること。

医療サービス提供者に以下を推奨する。

  • 短期的
    • 地域社会と協力し、すべての住民に情報へのアクセスを提供するとともに、感染リスクを軽減するために大きな集団での集まりを避けること。取り組むうえで、年齢、障碍、教育、ジェンダー、移民ステータス、性的指向および既存の健康状態などを配慮し、すべてのグループは単一的でないこと、したがってプログラムも単一的にはなりえないことを認識すること。
    • GBVとIPVのリスクとケースの特定や、思いやりのある非批判的な方法で開示を扱うこと、追加のケアのために患者を誰に照会できるのかなど医療従事者を訓練すること。
    • COVID-19の対応において、それぞれのコミュニティで女性と女子のニーズが汲まれているようにするため、女性医療従事者や地元の女性リーダーを意思決定の際に巻き込むこと。
    • 隔離や社会的距離を置くことが、異なる集団にとってどのような影響を与えるが考慮すること。
    • 同伴者のいない、あるいは離れ離れになった未成年者がアウトブレイクの対応に伴い被るリスクを軽減させるために人道支援団体と協力すること。
    • 生理用品や、産科、リプロダクティブ、その他プライマリーヘルスケアに関する商品に十分な在庫があり、ヘルスケア施設にて利用可能であること。
    • アウトブレイクに関連したデータを性別、年齢、障碍ごとに分けることで、医療専門家がそれらに基づく曝露や治療の違いを理解し、属性に合った予防策を講じることを可能にすること。
  • 長期的
    • 公衆衛生に関する準備や対応プランが、女性、女子、その他の脆弱なグループへの被害を軽減することを可能にするよう、公衆衛生上の緊急事態下、特に疾病のアウトブレイクでのジェンダーによる影響へのリサーチのために資源を投入すること。
    • グローバル・ヘルスのリーダーとしてあらゆる年齢の女性を参加させること。女性は多くの国において医療従事者の大半を占めているのにかかわらず、特に国際機関におけるシニアレベルにおいて、女性は少数しか存在しない。女性が意思決定プロセスにいない組織は女性のための最良な決定を下すことはできない。

開発および人道支援機に以下を推奨する。

  • 短期的
    • 女性、女子、LGBTQIAコミュニティ、その他脆弱な人々に対するGVB、IPV、性的搾取・虐待の急増に備えること。
    • これらのリスクを軽減し対応するために、安全に使用できるモバイル・ホットラインをサポートすること。ただし、すべての女性や女子が電話へのアクセスがあるわけではないことを理解すること。
    • 潜在的な移動制限や社会的距離を置く措置を考慮しながら、開発と人道的支援の提供を可能な限り安全に継続して行うこと。可能であれば、GBV、心理社会的サポート、水と衛生サービスを継続するとともに、食品、栄養、衛生商品の提供および避難所のサポートをすること。
  • 長期的
    • COVID-19アウトブレイクの影響を軽減するために、ターゲットを絞った経済的エンパワメント戦略および送金プログラムを発展させること。対象者には、公衆衛生の際に雇用されていた者で、アウトブレイクの終息とともに仕事を失った人や、復興と同時にレジリエンスをつける必要があるコミュニティを含む。
    • 国内避難民と難民が恒久的解決を見つけるための作業を継続または開始すること。これには、年齢や障碍、ジェンダーに基づく脆弱性に配慮した、十分な避難所や生計機会の提供が含まれる。
    • 公衆衛生危機の前、途中、後において、可能な限り最善のサービスをアクセス可能にし提供するために、地域社会、特に女性グループと協力すること。

国家に以下を推奨する。

  • 短期的
    • 援助関係者と医療従事者が、国境を越えている人々を含む、助けを求めるすべての人々にアクセスできるようにすること。医療従事者の急増に対応し、準備と対応のために、必要な人道支援者および医療品の輸送を許可する。
    • 必要に応じて、リモート学習あるいはラジオ学習を含む、教育の継続性を確保するための計画を準備し、実施すること。
    • 庇護申請者、国内避難民、および難民が国の準備、対応計画および活動の対象に含まれていること。
    • COVID-19に伴う移動制限に、様々な脆弱なグループのニーズが考慮されていること。
    • 庇護を求める権利を含む、国際的な法的義務の順守を維持すること。
  • 長期的
    • 緊急時の準備と対応の計画が、ジェンダーの役割やリスク、責任、社会的規範を認識するとともに、他の脆弱な集団の特別な能力とニーズを考慮した、正しいジェンダー分析に基づいていること。

国際的ドナーに以下を推奨する。

  • 既存の開発と人道的オペレーションがスケールアップし、COVID-19のもたらすリスクに対応できるよう、柔軟に追加の支援を提供すること。
  • 全ての資金調達プロポーザルに包括的なジェンダー分析と保護の主流化が含まれることを要求すること。

 

[1] Johns Hopkins University & Medicine, “Coronavirus Resource Center,” March 14, 2020, https://coronavirus.jhu.edu/ map.html.

[2] Sharon Begley, “Who Is Getting Sick, And How Sick? A Breakdown of Coronavirus Risk By Demographic Factors,” March 3, 2020, https://www.statnews.com/2020/03/03/who-is-getting-sick-and-how-sick-a-breakdown-of-coronavirus-risk-bydemographic-factors/

[3] Vaughn, “We Don’t Know Why So Few COVID-19 Cases Have Been Reported In Africa,” New Scientist, March 10, 2020, https://www.newscientist.com/article/2236760-we-dont-know-why-so-few-covid-19-cases-have-been-reported-in-africa/

[4] UN Office for the Coordination of Humanitarian Affairs (OCHA), “Global Humanitarian Overview 2020,” OCHA, December 4, 2020, https://www.unocha.org/sites/unocha/files/GHO-2020_v9.1.pdf.

(翻訳:小宮理奈)

 

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