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【COVID-19とジェンダー】ネオリベラル資本主義の失敗、COVID-19で鮮明に――フェミニストのグローバルな連帯を

2020/04/17

COVID-19とジェンダー 翻訳記事

以下はアジア地域フェミニストネットワーク組織APWLD(アジア太平洋女性・法・開発フォーラム)が出した声明の全訳です。

 

2020年3月20日
チェン・マイ、タイ

APWLD は、地域でそして世界中で、COVID-19パンデミック(世界的大流行)や相互に関連する様々な難局に苦しむ人々と連帯して立ち上がります。(人種、宗教、地域や階層は)様々であっても、世界中の女性がすべてこの危機に直撃され、二重三重の様々な差別、排除、暴力にさらされています。

COVID-19という、相互に絡み合う極度の経済的、社会的、政治的困難を招こうとしている、あるいはそもそもそういう極度な困難が招いたものでもあるこの公衆衛生の危機の影響が日々顕著になっています。それも一番周辺に追いやられた人々が最も打撃を受けています。決定的に不足している正確な情報へのアクセス、透明性の確保や国民の基本的なニーズを満たすという為政者の義務を果たせない各国政府の姿を私たちはこの目で見てきました。その一方で、デジタルビデオによる監視は強化され、夜間外出禁止やロックダウンは軍や警察を使って迅速徹底的に実行されています。移動を制限され、デイケアなどのサービスを受けるための十分なサポートがない中で学校が休校になった家庭で、(女がただでやる仕事という)ケアに関する父権的ジェンダー規範が日々あからさまになり、世界中でドメスティックバイオレンスが加速しています。契約ベースで働く臨時就労の女性をはじめとする人々が、仕事とそれによる生活の糧を失って食べるものにもこと欠き、自分も所帯も大きな負債を背負いました。

COVID-19のパンデミックとそれがもたらす危機を見れば、今のネオリベラル資本主義体制が、質の高い公的医療とすべての人が受けられる社会保護という人々の基本的なニーズに応えられないものだったのだということが歴然となりました。国際労働機構 (International Labour Organisation (ILO))が最近実施した初期評価では、COVID-19の影響で失職して収入と社会保護を失う可能性のある人は全世界で2 500万人に迫り(保護対象から外れた労働者)、ワーキングプアの深刻な増加が予測されています。アジア太平洋地域の女性は大半が農業、家事、内職や行商などの非公式経済 (informal economy) に従事しており、そもそも社会保護へのアクセスがありません。国際移民の半分は女性が占め、家事労働は移民女性にとってほぼ唯一最大の雇用選択肢なのです。また、COVID-19パンデミックによってリスクが増大している医療及び社会分野 (social sector) の就労者は7割が女性です。

これほどのレベルの危機に対する措置として、世界銀行(World Bank)と国際通貨基金 (International Monetary Fund)は、医療システムが世界で最も弱い貧しい国々を対象に緊急ローンを新たに設けるというネオリベラルな対応を発表しました。これらの国々では、構造調整政策 (structural adjustment programmes)の後を受けて、医療をはじめとする多くの必要不可欠なサービスが、金儲けの、ひいては民営化の標的にされてきたのが実態でした。だからこそ今この瞬間にこれほど多くの女性と周辺化されたコミュニティがとりこぼされていくのですが。米国や日本など財政支援による企業保護を優先している国があります。外国出身の家事労働者に対して休日にもかかわらず雇用者のもとにとどまってなるべくコミュニティ内にウィルスを拡散しないよう求めた香港労働省のように、不均衡で根本的に差別的な措置がとられています。福祉のセーフティネットを一切講じることなくロックダウンに踏み切り、難民 (refugees)、国内で移動を余儀なくされた人々、都市部の貧困コミュニティ、その他極度に周辺に追いやられた人々が深刻な危険にさらされ、食べ物を得る手立てのないまま放置されもしました。さらには、COVID-19パンデミックに襲われている最中に政治的な動機による制裁措置がとられ、戦争が継続されて、ジェノサイドに匹敵する被害を招きかねない国々があります。私たちは、独裁国家がこの危機に乗じて今次々と行使している、メディアの検閲、国際的な人権保護義務に違反する過度の軍事プレゼンスを伴う緊急事態宣言、その他一切の弾圧的措置を強く非難します。

女性は、国家予算の決定プロセスに参画しなければなりません。特にこのCOVID-19危機対応のように緊急財政政策が策定されるときには絶対にそれが欠かせないのです。不平等を緩和して富を再分配し、人権を確保する対応にするために。そのためには構造を変えなければならない、これは疑問の余地のないことです。構造を変えるためには、債務整理または帳消し、あるいはその両方、また、不正な資金の流れを絶ち、企業のタックスヘブン、タックスホリディを終わらせるとともに、有害な企業に(地球のどこにいようと課税できる)グローバルタックス等の対応が必要です。人権や環境権を越えて企業を優先することをやめなければなりません。手厚い企業保護を一掃し、COVID-19予防緩和手段を直ちに開発して必要な人すべてに無料で分配し、すべての人に福祉セーフティネットを確保して民営化されてしまった不可欠な公的サービスをすべて国営化する方向に舵を切らなければならないのです。今世界に展開する富の不平等は、グローバルサウス(南の発展途上国)に強要されてきた植民地的ネオリベラル政策が生みだし、蓄積してきたものです。今この危機に臨んで、開発正義 (Development Justice)を、そして国と国、富裕層と貧困層、男性女性間の富、権力、リソースの不平等を一掃する機会を要求してきたフェミニストと市井の人々の長い運動をあらためて思い出します。今、私たちはこの機会を直ちにとらえ、結集した力を奮い立たせて人権と基本的自由を実現しなければなりません。公的医療サービス、失業給付などの社会保護、公営住宅やベーシックインカムに代表される質の高い公的サービスへの権利は特に急務です。世界にはこれを実施できるだけの富が十分にあり、あとは実行する意思が政治にあるかどうかです。COVID-19 危機は、グローバルレベルで結束し、連携して動いて今世界を支配する強力な規範を覆し、人権と歴史に対する責任とアカウンタビリティ、国際協力と連帯の原則に立つフェミニストの視点で書き換えていかなければ克服できません。何としても、フェミニストと市井の人々の運動がこの取組みの中心となり、率いていこうではありませんか。

翻訳:黒江晶子

原文はこちらから

COVID-19 Highlights the Failure of Neoliberal Capitalism: We Need Feminist Global Solidarity

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