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【COVID-19とジェンダー】危機から新しい社会契約(ソーシャルコンパクト)へーー包括的で交差的なフェミニストのアプローチこそ新型コロナウイルスの危機から抜け出す唯一の方法

2020/07/15

COVID-19とジェンダー 翻訳記事

以下は、Women in Migration Network声明の全訳です。

 

新型コロナウイルスがもたらした人心の荒廃および、経済的な荒廃で世界が騒動しているなか、このパンデミックではっきりしたことが一つあります。それは、これまでと同じ平常運転はいけないということです。大胆な行動がなければ、この危機は世界の不正と不平等を悪化させ、女性や有色人種、移民、インフォーマルな経済労働者、および他の搾取されたグループがさらに疎外されることになるでしょう。もし私たちが人権とニーズの普遍性を高めるのではなく、バリアと壁を築くことで世界的なパンデミックを打ち負かそうとするならば、私たちは失敗する運命にあります。そのような取り組みには、労働者家庭の政治的・経済的権利を脅かす権威主義者や企業の権力構造を定着させる危険があります。

しかし、代替案があります。この危機から、より強く、より公正に、そしてより平等へと向かうことは可能です。明るい未来に向けて進むには、世界の指導者たちは大きく考えるとともに、女性の声に耳を傾ける必要があります。提供者や介護者、在宅介護者、およびフォーマル・インフォーマル経済の両方における不可欠な労働者など、女性(LGBTQIの女性を含む)は様々な役割を担っています。彼女らは、危機が家族やコミュニティ、仕事に与えるインパクトを重層的に理解しており、そのような理解は必要な対応の幅と規模を明確にします。

特に移民女性は世界をまたいでいるにも関わらず、あまりに頻繁に、最も基本的な権利や保護、および社会福祉を享受することができません。その結果、彼女たちはウイルスに曝露するリスクをはじめとして、メンタルヘルス、家庭内暴力、ジェンダーに基づく暴力、職場でのハラスメントなど様々な懸念に直面しています。自宅監禁やソーシャル・ディスタンシング、ロックダウンに伴い、サポートと休息のために必要なコミュニティ空間へのアクセスが遮断されたことにより、既存の有害な権力関係は悪化しました。このような囲い込みにより、女性活動家や、移民女性、インターセクショナル・フェミニストにとって非常に警戒する時期がもたらされました。多くの移民女性は身分証明する文書がないために、収入を生み出す能力を妨げられ、社会的保護や移動の自由の制限など、特に社会の軍事化が進む状況のなかで、さらなる制約を受けています。

これらの厳しい現実にもかかわらず、移民女性はレジリエンスをもって相互援助と最前線の緊急対応に従事しながら、社会に重要な教訓を提示する連帯モデルをより広範に作り上げています。私たちは政府に対して、すべての移民女性の(出発国、通過国、目的地、帰国すべてにおける)保護とサポートだけでなく、彼女たちを重要な変革を生み出す担い手として関与させることを要求しています。

この危機は移民女性が長い間苦しんできた、経済における非公式性や脆弱な医療制度、社会的セーフティネットの欠如、構造的人種差別、ジェンダー差別、非人道的な移民制度などの制度的な問題を露呈しています。グローバリゼーションと厳しい市場の正統性は、不安定さや低賃金、無防備な労働を生み出し、それらは女性が生存する手段としての国境や地域を越える移住を余儀なくされている要因となっています。

ヘルスケアや教育、家事、フードサービス、農作業、掃除、子育て、そして高齢者や身体の不自由な方へのケアなど、私たちの生存に不可欠な仕事は、偏って移民女性が担っていますが、パンデミックに対する現在の政府の対応はそれらの仕事に対する組織的な過小評価を明らかにしています。このような作業や仕事の重要性を鑑み、政府はそれらの仕事に従事する人に対し、今よりもはるかに強固な保護を労働と健康に関して確保する必要があります。

今こそ、こうした欠陥のあるシステムを単に復旧するだけでなく、これらの致命的な欠陥に対処する時です。The Women in Migration Network(WIMN、移住ネットワークの女性)は、医療、経済、移民制度を再構築し、ジェンダーに配慮し、人々を第一に考え、すべての人々を平等に尊ぶよう、包括的で変革をもたらす計画を要求しています。

危機に対する新自由主義の市場主導の対応は、すでに存在する格差を広げ、強制労働を拡大し、労働者の団体としての力や権利を押しつぶすことになります。これは移民女性たちが最も痛感している裏切りです。

特権的な少数の人々に富と権力をさらに集中させることは、中核的な民主主義制度を危険にさらすことになります。これらの脅威に直面して、WIMNはグローバルな労働運動に参加し、移民の権利、交差するフェミニズム、気候正義に関し、新しい社会契約(ソーシャルコンパクト)を求めます。私たちは今、身分に関係なくすべての人にサポートとサービスを提供する恒久的な解決策が必要です。解決策は何百万もの移民、特に不法移民を排除し続けている保護の格差を埋めることになるでしょう。

この危機が、税制と予算の優先順位付けにおける腐敗を露呈させるなか、社会の貴重な資源をどのように生成し割り当てるかを完全に見直す必要があります。かつて、先進国と開発途上国の両方において、公的医療制度への資金を増やす必要性がここまで明らかになったことはありません。医療従事者の多くは移民女性労働者ですが、彼女たちは疫病に使われる個人用医療保護具を十分に持っておらず、回避可能であるリスクにさらされていることは、許しがたいことです。その一方、数え切れないほどの数百万ドルが、どのような状況下であれ(現在の危機の状況下においてはなおさら)解放されるべき移民家族を拘留するために費やされています。

緊縮財政や移民の継続的な排除、犯罪化、拘留、国外追放は正しい解決策ではありません。国境閉鎖、安全保障化、および庇護申請者や難民の避難所へのアクセスの禁止は、移民女性とその家族に不均等な影響を与えます。脅威を認識するとき、国家はしばしば内在するバイアスを強調することで、男性化そして軍事化された利益のための特権を維持します。世界中で恐怖のレベルが高まるなかで見受けられる、外国人嫌悪感のレトリック、政策、行動も同様といえます。これらの危険な力は正面から取り組まなければなりません。

我々は、移民の合法化を危機対応の中心的要素にすることを国に要求するとともに、包括的で権利に基づくジェンダー対応型のアプローチを採用する国々に敬意を称します。戦略的な地域および国へのアドボカシーのため、WIMNはこれらのベストプラクティスや、その他の国際的な枠組みおよびモデルの共有に取り組んでいます。このためには、パンデミック下において移民の脆弱性を増大させるデータと情報のギャップに対処しなければなりません。

さらに私たちは、各国政府に対し、進行中の気候危機の緊急性を認識し、それに対処する財政刺激策を実施するとともに、質の高いグリーン・ジョブの創出や公共交通機関および再生可能エネルギーなどのグリーン・インフラへの支援を通じた、より再生可能な経済の構築を支援するよう要請します。化石燃料汚染や気候関連の災害、作物の損失は、人の移動と移住の数を増加させる原因となっています。これらの現実に最も影響を受けているコミュニティを新型コロナウイルス対策から取り残さないようにしなければなりません。

政府による選択は労働者、移民や女性に深刻な長期的影響を与えるでしょう。私たちは、権威主義の高まりや自由すぎる資本主義に対して激しく抵抗しなければなりません。WIMNは引き続きネットワークに情報を提供し、人々を教育していくことで、移民女性が安全で、自分たちの権利を知り、公正な待遇と進歩的な構造改革を主張する準備ができるよう取り組みます。構造改革には、出身国および通過国、目的地における恒久的な社会的保護、堅牢な労働保護の枠組み、ジェンダーに配慮した権利に基づく移民制度、再生可能で持続可能な経済、企業権力に対する明確な監視、強い民主主義機関が含まれます。

移民女性は、私たちの社会の危機を乗り切り、復興を強化し、次のグローバルな課題に備えるための重要な役割を果たしています。政策立案者は、人々の生活維持に欠くことのできない仕事(エッセンシャル・ワーク)についての理解を広げ、重要なステークホルダーである私たちと積極的に関わるべき時が来ています。

(翻訳:宋春樺、翻訳チェック:小宮理奈)

 

 

原文はこちらから
From Crisis to a New Social Compact: An inclusive, intersectional feminist approach is the only way out of the COVID crisis

 

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