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公正でグリーンなフェミニストのCovid-19対応と回復に向けて、 ケアエコノミーへの投資を

2020/10/05

COVID-19とジェンダー翻訳記事

以下は、125以上のフェミニスト団体・個人などによる共同声明の全訳です。

 

「女性が止まれば世界は止まる」
私たちは、人と地球を中心に人権・食糧主権・気候正義を擁護する代替発展モデルを求める。すべての女性のためにディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と生活賃金を求める。無給のケア労働が公正に認識され、削減され、再分配されることを求める。ジェンダーに基づく暴力を終わらせてほしい。企業の違法行為を止めてほしい。資源・権力・機会への正当なアクセスを要求する。私たちの声が聞かれ、尊重され、守られることを要求する。私たちはシステム全体が変わることを求める。それも今すぐに!
(政治声明-女性グローバルストライキ2020)

 

女性は全員働いている!
以下に署名した私たち、フェミニストのネットワーク、労働組合、社会正義運動と組織は、フォーマル経済かインフォーマル経済か、官か民かを問わず、家庭・地域社会・職場での女性の有給・無給の労働搾取をなくす公共政策を求める。すべての女性が働いているのであり、有給・無給のケア労働と家事労働のいずれもが、人間的・経済的・社会的進歩に不可欠であることの認識を求める。特に、医療を含むケアエコノミーにおけるジェンダーに基づく不公正な分業により、女性は世界的なパンデミックの最前線かつ中心に置かれている。しかもほとんどの場合、最も搾取され、保護も無い、侮辱的な条件である。

このような不正義をいつまでも続けさせるわけにはいかない。

 

そもそも債務を負っているのは誰なのか?
COVID-19パンデミックは世界経済全体に衝撃波をもたらしたが、グローバルサウスの国々はすでに通貨安、資本流出、輸出収益の減少、商品価格崩壊、税収の落込みなど、このメルトダウンの最悪の事態に直面している。これを受けて、IMF、世界銀行、G20は、2020年からの債務支払い義務を取り消すなど例外的な措置を講じるほか、グローバルサウスのほとんどの国を襲っている資金繰り問題を緩和するための追加措置を講じるよう要請されてきた。しかしこうした対応は、これまでのところまったく不十分である。COVID-19 緊急事態用の公的資金を債務返済に転用することは容認できない。私たちは、今回の緊急事態と回復の期間中は、各国政府が債務の元利支払いを停止することは正当であると考える。

現在各国が襲われている財政危機は、パンデミックによるものではなく、不正な資金の流れと脱税・租税回避によって財政を枯渇させるグローバルな金融構造によるものである。それは実体経済への投資よりも投機に報い、無責任で腐敗した不正な貸借を煽る。新植民地主義システムにより、持続可能な開発のための資金が逼迫している。同システムは、グローバルサウスの少数のエリートの共謀で、債権者・富裕国・企業に圧倒的に有利になっているのだ。この歪んだ債務と金融システムがあるために、バランスシートから省かれたままになっているのが、(i)環境破壊および気候変動、(ii) 女性が行う無給のケア労働と家事という再生産労働に対する対価、(iii)ジェンダーに基づく賃金格差による女性の所得損失、(iv)資金不足と民営化による公共財・ケアを支えるインフラ・施設の減少、 (v)土地と天然資源が奪われたことによる共有資産の喪失、(vi)国際政府開発援助(ODA)義務(GDPの0.7%)を満たすべき援助国の資金不足、(vii)資源の利害関係者を保護するための軍事介入と仕組まれた対立のコストによる損失である。

私たちは、債務の帳消しは慈善として行うものでも寛大さから行うものでもないと考える。それは、富の蓄積における帝国主義システムのバランスを取り戻すための最低限の条件である。借りを返すべきは私たちではない。彼らが返すべきだ!

 

女性が止まると世界は止まる
テクノロジーが世界の労働力に次第に取って代わるという神話は、家庭・地域社会・市場・グローバル経済の中で女性が社会的な再生産のために行っている肉体的・感情的・性的・知的労働を、都合よく考慮から外している。この神話では、生計を立てるための農作業に農村女性が無給の家族労働を投入しているからこそ、その世帯はなんとか栄養失調や飢餓に陥らずにすんでいることを無視している。成長を生み出すのは外資であるという神話は、公共部門の何百万人もの女性労働者の仕事の価値を貶めるために意図的に構築されたものである。何十年にもわたって女性労働者は使い捨て可能だと御託宣を授けてきた資本主義の大祭司たちは、女性労働者が不可欠なサービス(看護師、医師、管理者、救急・社会福祉士、コミュニティ福祉ワーカー、教師、清掃員、トラック運転手、ゴミ収集作業員など)を提供しているのであって、これ無くしては市場が崩壊することを認めざるを得なくなった。ディーセントワーク、生活賃金、普遍的な社会保護プログラムは経済成長を妨げるものではなく、社会経済的回復力の基盤となるものである。女性が集中しているインフォーマル経済は経済全体に対する寄与度が低いという考えは、グローバルサウスの大多数の世帯の生計手段がインフォーマル経済なのだと認識されることによって、その誤りが明らかになった。

女性グローバルストライキ運動のスローガンがこれほど明白であったことはかつてなかった―「女性が止まると世界は止まる」

 

国家機能を空洞化させ公的資産を剥奪する
COVID19のパンデミックにより、国民の健康を支える様々な重要インフラと公共サービスについて、各国の許し難い怠慢と資金不足が露呈し、その埋め合わせをするために、女性の労働と時間的負担がますます重くなっている。市民よりも利益を優先する新自由主義により、最も裕福な国の一部でもCOVID-19パンデミックの問題に適切に立ち向かうことができていない。開発途上国のマクロ経済政策は、世界銀行と IMF の緊縮財政の規定に40 年間従ってきた結果、(i) 債務の持続不能・支払い不能、(ii)公衆衛生のインフラ・研究・サービス・人員配置の削減や凍結、(iii)すべての労働者、特に公衆衛生労働者を対象とする権利の剥奪、(iv)健康・水・衛生サービスの民営化による、大多数にとっての利用不能と料金高騰、(v)貴重な資源の純資本流出、そして(vi)不衛生な住宅と職場、が発生することとなった。エボラ出血熱、SARS、MERS、ジカ熱などの相次ぐ健康危機を受け、公衆衛生システムや国民保険制度への再投資の必要性が叫ばれたものの、この警告は、各国のこのような人権保護義務のための資金調達の支援を信任されていると主張する当の機関によって無視されてきた。国家の空洞化により、パンデミックとロックダウンの二重災害への対応の多くは、女性を中心としたコミュニティ精神と自発性の動員に委ねられてきた。

私たちはフェミニストの連帯と愛の精神でこのような働きをしているが、低コストの社会的セーフティネットとしての女性の無給・低賃金労働の搾取には断固拒否を表明する。

 

権利侵害をエスカレートさせる危機の循環
国際金融資本の利益を引き出すことを目的とした新自由主義のマクロ経済政策が、開発途上国とその国民(大半は子供、青少年、若年成人)にとって破滅的なものであったことは、この数十年来明らかである。COVID-19パンデミックに襲われたのは、変動性の高まる経済状況、迫り来る債務危機、雇用不安、社会的および政治的不安定性、環境災害にすでに苦しんでいた人々である。結果として生じる社会危機と対立により、女性のケア労働の負担が増すだけではない。あらゆる女性・トランスジェンダー・Xジェンダー・移民・難民・先住民・占領下で暮らす人々・障害を持つ人々もまた、ジェンダーに基づく暴力の新たな波を経験する。あらゆる種類の政治的・宗教的過激派が大衆の不満を利用して、女性蔑視・人種差別・クィア恐怖症・外国人恐怖症・宗派主義・憎悪を強めるからである。新自由主義システムにより、二世代にわたる若者たちが、健全な地球上で健康的な生活を営む権利をはじめ社会的・経済的・政治的・市民的権利を享受する機会を奪われてきた。特に重大なこととして、新自由主義により、人権を守る義務を果たし危機と災害に対応する国家とその機能が失われてきた。このことは、福祉に直接責任を負う政府部門が、国家の官僚機構との関係が悪くなって予算を削られ、国民が直面している社会問題に対処するためにドナーからの資金提供に依存するようになったことを表している。

 

国家政策と開発金融に対するIFIの締付けを打破する
このような重大な社会的影響にもかかわらず、数十億ドル規模の開発資金調達の鍵を握る国際金融機関(IFI)と企業は、その権限を極めて厳しく用いて採取主義的な経済モデルを押し付けてきた。この経済モデルは、新たな自由貿易と投資協定、民営化の強化、経済の金融化を促進し、そのすべてがより多くの富と権力を少数者の手に移すためのものであった。現在の世界的パンデミックのまっただなかでさえ、こうした機関のこれまでの対応は、他でもない融資条件を厳格化し、各国がCOVID-19パンデミックによる経済的・政治的・社会的な荒廃を緩和するために必要なマクロ経済政策を追求することを妨げるものであった。

新しい調査によると、IMFの資金調達契約は、80%の国で不必要に低いインフレ目標を課し、96%の国で赤字目標を課し、78%の国では公共部門の賃金を凍結または削減することにより、公共支出を抑制している。そのため、ほとんどの国では教師、医師、看護師、介護福祉士をこれ以上雇うことはできない。低所得国の公共支出を圧迫する新たな債務危機が発生しており、状況は悪化している。中には、教育予算と健康予算を合わせたよりも多くの金額を債務返済に費やす国々もあるのだ。各国がこのような政策の拘束から解放されるまで、何も変わりはしない。

開発途上国のための債務救済、緊急資金調達、社会保護に対する IMF の最小限の介入しか行わないアプローチには、啞然とするしかない。

公正でグリーンな
フェミニストによる回復に向けて
GDPの成長は、いかなる進歩の指標としても時代遅れであり、21世紀において目的に適合していないことは明らかである。GDPが成長しても、貧困からの脱却、飢えの根絶、就学する女子の増加、若者の安定雇用、手頃な価格での質の高い医療提供、地域でのきれいな水の供給は、実現しなかった。GDPの成長にこだわるあまり、人間と持続可能な開発の他のすべての尺度の重要性が軽んじられてきた。蓄えてきた公共財、インフラ、サービス(郵便事業、病院、学校、廃棄物管理、衛生、保全地域などなど)が全体的に削減されれば、私たちの共通の富は増加しない。減少するのだ。また、これによりジェンダーの不平等も強化される。

補助金を受け無料の公共財とサービスが民営化されたことにより、本来、利益を出すことができず出すべきでもないサービスに民間投資が「詰め込まれた」だけで、政府の赤字は減らなかった。見境のない貿易自由化と様々な輸出志向モデルは、経済の多様化も工業化も促進せず、長期的に持続可能な外国からの直接投資ももたらしはしなかった。規制緩和は行われたが、誰もが繁栄できる公正な経済競争の場は創出されなかった。炭素市場によって温室効果ガスの排出量は減少してはいない。「経済成長」を目的とした上記その他の処方箋は、偏った富の蓄積システムを定着させる以上のものではなかった。その一方で、増え続けるシステミックショック・災害・危機に対処するための集団的なメカニズムはお粗末なままだ。私たちは、COVID-19パンデミック後の世界が決して元通りではないことを知っている。

各国政府は、新自由主義の経済システムと機関を解体し、これに代わるものとして、持続可能性・平等・正義の原則に基づいた税制・貿易・債務・資金調達などに関連する経済モデルおよび政策を支持し推進するとともに、成長とGDPを超えるものを進歩の指標としていかなければならない。

各国政府は、フェミニスト的エビデンスと分析、知識と代替案を用いて、ディーセントワーク、生活賃金と所得保障、ジェンダーに応じた公共サービスに対する女性の権利をまず第一に認め支持するような社会経済発展モデルを、導入しなければならない。

各国政府は、インフォーマル経済の労働者を疎外し犯罪者扱いすることを止め、こうした労働者が経済において果たしている極めて重要な役割を認め、促進し、評価しなければならない。エッセンシャルワーカーとして国に正式に認められているかどうかにかかわらず、食糧安全保障・農業・医療・育児・輸送を含む幅広い分野のインフォーマル労働者が、今日、パンデミックに対する国の対応の最前線に立っている。

各国政府は、ケアを支えるインフラと制度に投資し、ケア部門(教育・医療・介護・福祉・家事・社会・公共交通・住宅・水・衛生)全体を通して労働者にディーセントワークに則った労働条件を確保することで、ケアエコノミーに対しシステム全体にわたるアプローチを展開する必要がある。

各国政府は、質が高く誰にでも手の届く公共サービスと社会的保護を確保することで、様々な女性を不公平で持続不可能な無給のケア労働の負担から解放しなければならない。

女性の労働を女性以外のすべての人のための無料または安価な商品として扱う不正義と権利侵害のがんじがらめの網を打ち破らずして、世界秩序の真の変革の実現は不可能である。医療・社会システムの中で私たちが集団的に負ってきた再生産労働とケア労働の負担を認め、支援・共有しなければ、COVID-19後の確実な回復は起こらない。世界中の女性、トランスジェンダー、Xジェンダーの人々に強く呼びかける。私たちの力を取り戻し、生活賃金、所得保障、普遍的社会保護制度、そして、ジェンダーに対応する確実な公共サービス、労働市場での平等なアクセスと待遇、ジェンダーに基づく暴力のゼロトレランスに対する権利を守るのだ。
この声明は現在、以下の組織の賛同を得ています。(一部抜粋)
債務と開発に関するアジアの人々の運動
アフリカ女性開発通信ネットワーク
女性人身売買に反対する国際連合
国際公務労連
新時代にむけて女性と共におこなうオルタナテイブ な開発
女性・法・開発に関するアジア太平洋フォーラム
女性の権利発展協会
インフォーマル雇用における女性:グローバル化と組織化
アクション・エイド・インターナショナル
カルモジビ・ナリ

 

この声明は現在、以下の個人の賛同を得ています。(一部抜粋)
Nancy Kachingwe
Burnadfatima.N
Hitesh BHATT
Eleni N Karaoli
Anjum Sultana
Nukila Evanty
SANDRA CASTANEDA
Gertrude Kenyangi
Xenia Giagli
Gilmária Ramos

(翻訳:Jaimie Ge Jin、翻訳チェック:川井孝子

 

原文はこちらから
Invest in the Care Economy for a Just, Green, Feminist COVID-19 Response and Recovery

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