ニュース

難民・移民女性に対する直接的・構造的暴力を悪化させる入管法改悪に反対します

2023/05/12

難民・移民女性に対する直接的・構造的暴力を悪化させる入管法改悪に反対します

わたしたちは、深刻な人権侵害を引き起こす懸念が指摘されている入管法改正案が、5月9日、自民・公明・維新・国民民主などの賛成によって衆議院を通過したことに強く抗議し、廃案を求めます。

この法案については、低い難民認定率にも関わらず、迫害の恐れがある国への強制送還を促進し、日本で築いてきた生活の基盤と人間関係を剥奪することになる等、重大な権利侵害の恐れが指摘されています。わたしたちはさらに、女性の権利保護、ジェンダーにもとづく暴力・抑圧の撤廃という観点からも、この入管法改悪は決して容認できないことを強調したいと思います。

ウィシュマ・サンダマリさんの虐待死が示したのは、入管施設における被収容者に対する非人道的扱いだけではありません。ウィシュマさんはDV被害に遭ったことから学校に通えなくなり、適切な支援に繋がることができないままに在留資格を失った結果、収容下で虐待にさらされることになりました。これはジェンダー暴力の被害者が、国籍や在留資格にかかわらず保護を受けられる体制が確立されておらず、入管法の下で犯罪者化されてしまっているためです。

さらに、技能実習生が乳児の死体遺棄で訴追された事件からも明らかになったように、移民女性たちが犯罪者化される背景には、彼女たちを追い詰める日本社会の構造的暴力があります。定住支援や差別撤廃のための政府の取り組みが欠けている一方で、入管法によって法的地位が不安定にされているために、移民たちの多くは、経済的社会的に非常に脆弱な立場に置かれてきました。特に仮放免者は、就労や基礎的社会サービスからも排除されているために、家族やコミュニティ以外に頼る先がほとんどない状態に置かれています。こうした中で女性たちは、国籍や人種にもとづく差別とジェンダーに基づく差別の複合的影響を受けやすく、家族の中でも過重なケア責任を負っているにもかかわらず、支援を求めにくい状況に置かれています。彼女たちをとりまく状況は、その子どもたち、とりわけ女児のライフチャンスも狭めています。

日本政府が「女性に対する暴力の撤廃」や「困難女性支援」を謳うのであれば、まずなすべきことは、難民・移民女性たちを追い詰める入管法体制をいっそう強化することではありません。彼女たちが日本社会の平等な一員として安定した生活を築き、自らの意思にしたがってその持てる力を十分に発揮することができるよう、国連人権機関の勧告にしたがって、あらゆる法的・社会経済的・文化的な障壁を撤廃することこそ必要です。

以上の理由からわたしたちは、現在提出されている入管法改正案に反対し、難民移民の権利保障のための法律・施策を求めます。

 

2023年5月12日

NPO法人 アジア女性資料センター

 

DOCUMENTS